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アトピー性皮膚炎について

はじめに

アトピー性皮膚炎に対してどう思いますか?「一生治らない病気?」「一生苦しむ病気?」かつてはそう考えられていた時代もありました。筆者(院長澄川)も幼少期よりアトピー性皮膚炎で苦しみ、小学生の時は人に見られるのが嫌で、半ズボンが履けませんでした。

中高生の時は調子が良かったのですが、大学生になって顔にも症状が出るようになり、絶望感に襲われたこともありました。私の妹も重症のアトピーでしたが、民間療法に走ってしまいました。

当時アトピーの治療はステロイドバッシングの影響もあり混乱していた時代です。医師になるときは当時治らないとされていたアトピーをなんとか治したく、自ら研究しよう思い皮膚科に進みました。それからアトピーの臨床と研究に20年余り携わり、アトピーの治療の発展に少しながら貢献してきたと自負しています。

そして現在、様々な研究が進み20年前とは考え方も治療薬も変わりました。

今は保険診療でアトピーが治る時代になった

そう言ってもいいと思います。現在アトピーで悩んでいる方はぜひ最新の知見、治療に触れていってください。この後の記事をご覧いただき、かかりつけの医師に新しい治療について質問してみてください。アトピー性皮膚炎の治療に特に熱心な医師が集まるアトピー性皮膚炎治療研究会(http://atopy-treat)という組織があります。定期的に情報を発信する予定ですのでご覧いただければ幸いです。

 

 

アトピー性皮膚炎治療のゴールとは?

アトピー性皮膚炎の治療ゴール=“治る”はガイドラインにあるように“日常困らないレベルに抑えられていること”です。
 

「それでは治ったことにはならないのではないのか?」「一生付き合わないといけないのか?」と思う方も多いかと思います。しかしそう言うと“風邪は一生治らない”というのと同じことになるのです。風邪を二度とひかないようにすることは現在の医学では不可能です。ですが、風邪をひいたときは休んで、薬を飲んで治すわけです。普段も風邪をひき続けているわけでなければ日常生活に支障はありませんよね。

アトピー性皮膚炎も同じです。二度と湿疹が出ないようにすることはできません。

しかし、普段はスキンケアをする程度で、湿疹が出た時に数日ステロイドの外用を行って治し、日常生活においてかゆみなどで困っていなければいいのではないでしょうか?
 

現在は湿疹、かゆみをなくす手段はいくつも出てきています。それらをうまく使って、「日常生活の中のアトピー性皮膚炎が占める割合を極力減らす」のが治療の目的ということになるのです。そういうレベルでアトピーは治る、と言っているわけです。

アトピー性皮膚炎の原因は?

「アトピー性皮膚炎の原因は何でしょうか?」よく皆さんから質問を受けます。その意図は“アトピーの原因を取り除けばアトピーは治るのではないか”ということなのだと思います。アトピー性皮膚炎の関連図(下記)を見てください。

私はアトピーにはこの4つの要素があって、矢印の方向にぐるぐる回り続けている状態だと考えています。それぞれについて解説します。

 

1.皮膚のバリア機能の低下

皮膚は最外層に「角層」という油とタンパクが混ざり合った膜で覆われています。これが脱落したものが垢です。角層は水をはじくなど外界からいろいろな物質が皮膚を通して体に入るのを防いでいます。同時に体内から皮膚を通して水分が蒸発するのもブロックしています。
 

また角層内には「抗菌ペプチド」という生体が作り出す抗菌物質が練りこまれており、角層上で無限に細菌が繁殖するのを防いでいます。従って角層を剥ぐと皮膚のバリア機能は大幅に落ちてしまいます。そのため垢すりなど皮膚の角層を落とすことはよくありません。

乾燥肌やアトピー性皮膚炎の方にはもともと角層内に含まれる「フィラグリン」というタンパクが少ない人が多いことがわかっています。
 

そのため角層がはがれやすくなっており、皮膚のバリア機能がもともと低いのです。また生活習慣で洗いすぎることでも皮膚のバリア機能が低下します。このことについては“チベットにはアトピーがいない?”でお話しします。

 

2.抗原暴露量の増加

炎症反応を誘発する原因となる物質を「抗原」といいます。体内に抗原が入ってくるとそれを排除したり無毒化しようとする炎症反応が起こります。皮膚のバリア機能が下がっていると外界の抗原がどんどん皮膚に入ってきて炎症を起こすようになります。

アトピー性皮膚炎患者ではダニ抗原に対するIgE抗体(アレルギーを誘発するタンパクでいわゆるアレルギー検査で調べているもの)が高値になることが知られています。

これは皮膚のバリア機能が低下しているため環境中のダニ抗原がどんどん皮膚に入っていた結果だと考えています。

 

3.炎症の誘発

外界から抗原は入ってくるとそれに対し炎症反応が起こります。特に皮膚を経由して抗原が入ってきた場合アレルギー性の炎症(Type2炎症といいます)が引き起こされることが知られています。そのため乳児期では湿疹病変から食物抗原が入るのを防いであげる必要があります。
 

詳しくは“乳児湿疹と食物アレルギー”でお話しします。

このアレルギー性炎症では強いかゆみとともに皮膚で強い炎症を引き起こします。そのためかゆみの強い湿疹病変を形成するのです。

炎症を起こした皮膚では皮膚のバリアが破壊されています。皮膚の角層ができるまでは1か月から1か月半かかりますので、炎症がなくなった状態でもすぐにバリアが戻るわけではないのです。

 

4.そう痒の増加

近年かゆみを引き起こす物質(インターロイキン31など)がわかってきました。同時にアレルギー性炎症ではこれらのかゆみを引き起こす物質が作られることが明らかになりました。したがってアレルギー性炎症ではかゆみが増加します。
 

そのため掻破により皮膚を傷つけ皮膚のバリア機能が低下します。「かゆみがあっても掻かなければいいのではないか?」という考え方もあります。
ただ日中は我慢できても寝ている間に無意識に掻いてしまうので実際は不可能です。したがってかゆみのコントロールは重要です。

 

2のように一度このループに入ってしまうと永遠に悪循環し続けることになります。これがアトピー性皮膚炎の本態だと考えています。アトピー性皮膚炎の原因=スタートは先ほどの4要素のいずれから開始しても同じ病態に行きつくことになります。「皮膚のバリアが弱い」ことが原因である人もいれば「アレルギー性炎症を起こしやすい遺伝子が原因」の人もいるということです。
 

そのためいまだアトピー性皮膚炎の原因が特定できていないのは、人それぞれにより原因が異なるからではないかと考えています。

図1
図2

アトピー性皮膚炎と治療は?

先ほどの4つ原因を取り除くと悪循環を断ち切ることができ、アトピー性皮膚炎がよくなります。それぞれの原因について対策を示します。

 

1.皮膚のバリア機能低下

皮膚のバリア機能低下に対しては「角質を保護すること」が重要になります。先ほど述べたように角層を剥がないようにするとともに保湿剤で保護します。そのために勧めているスキンケアは

・石鹸・ボディーソープの使用を控える

 石鹸ボディーソープは角層中の油分をとってしまいますのでバリア機能が低下します。乾燥しやすい部位は避けましょう。

・こすって洗うのをやめる

 こすることで垢を落とすというイメージですが、垢がバリアとして働きますので垢は落とさず極力皮膚に残るようにしましょう。

・保湿剤を塗る

 保湿剤を塗ることで皮膚を保護します。保湿剤については“保湿剤の特徴と選び方”でお話しします。

以上の考えに至ったのはチベットでの疫学研究でした。詳しくは“チベットにはアトピーはいない?”でお話しします。

 

 

2.抗原暴露量の増加

抗原暴露量を減らすことで炎症の誘発を減らすことができます。以前は「ダニ抗原を減らすことでアトピー性皮膚炎の改善が見込まれるのではないか」と考えられ防ダニグッズが作られましたが、その後の研究であまり効果がないことがわかりました。金銭的、時間的苦労が多いわりに成果が上がりませんので現在では積極的に行われていません。
 

ダニ抗原を手軽に減らす方法としては「部屋の湿度を下げる」ことです。乾燥しているとダニの活動性が落ちダニ抗原量が減ります。ダニアレルギーが強い場合は除湿機をかけて部屋の湿度を下げてみてもよいかと思います。

 

 

3.炎症の誘発

アトピー性皮膚炎治療で重点が置かれているのはこの炎症を止めるというアプローチです。古くはステロイド外用薬を用いていましたが、近年「生物製剤」や「JAK阻害薬」と呼ばれる免疫抑制剤が使えるようになり、これらの薬をうまく用いることで重症のアトピー性皮膚炎でも副作用が少なくコントロールができるようになりました。
 

治療薬については“現在使えるアトピーの治療薬”のところで詳しくお話しします。

 

 

4.そう痒の増加

アトピー性皮膚炎ではキーとなるポイントになります。掻かなければアトピーはよくなりますが、掻くのを我慢することはできません。そのためにかゆみのコントロールが長年の課題でした。古くは抗ヒスタミン薬が用いられていましたが、近年かゆみに対して抜群の効果がみられる「JAK阻害薬」や「生物製剤」が使えるようになりました。
 

これらの薬については“現在使えるアトピーの治療薬”のところで詳しくお話しします。

最後に

アトピー性皮膚炎の知見と治療はこの5年で大幅にすすみました。現時点でアトピーはなんとかなる病気になりつつあります。今後も新たな治療薬が出る見込みですのでさらに簡便に“治る”時代が来るものと思います。
 

この記事が少しでもアトピー性皮膚炎に対する理解を深める為のお役に立てば幸いです。

デュピクセントⓇによる
治療について

■デュピクセントの小児適応について

デュピクセントは今まで15歳以上の方でないと投与することができませんでしたが、2023925日より生後6か月からのアトピー性皮膚炎患者さんへの投与が可能になりました。

アトピー性皮膚炎を引き起こすアレルギー体質は遺伝することが多く、当院でもご兄弟や親子でデュピクセントを導入され症状が落ち着いている方もいらっしゃいます。

今まで12歳未満のお子さまにはステロイド外用剤と数種類の外用剤しか治療手段がありませんでした。内服は抗ヒスタミン薬がありますが、アトピーの痒みにはほぼ効きません。

そのため、痒みを我慢できずひっかいてしまうことで肌のバリア機能が壊れ、更にアトピー性皮膚炎の症状が悪化していくという悪循環に陥っているケースがよく見受けられました。

今回のデュピクセントの小児適応は、悩まれているお子さまはもちろん、お子さまが苦しんでいる姿を見ている親御さまにとっても希望の光になると思っております。

 

デュピクセントは、通常の治療では症状が良くならない難治性のアトピー性皮膚炎の患者さんにとって安全性と効果の高い治療ですが、治療費が高いことがネックになっていました。

しかし、小児の患者さんの場合は、自治体からの補助金が出ますので患者負担を無償にすることが可能です。

当院では、お子さまが苦手な注射タイプではなく、新しく発売される予定のシリンジタイプのデュピクセントを使用する予定です。

また当院はアレルギー専門医が在籍していますので、デュピクセントをただ打つだけではなく、スキンケア外用と組み合わせた治療提案を行っています。

 

気になる方はお気軽にご相談ください。

 

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